弦楽器専門店に行ってきた

 風呂敷に包んだヴァイオリンを抱えお店に入った途端、いかにも高価そうな楽器が並んでいるのを目の当たりにし、こんなガラクタ(遺品です)を見てもらっても大丈夫なのか?という不安を抱きつつ店員さんに話しかける。

「あの、遺品整理をしていたらバイオリンが出てきまして。多分安いものだとは思うのですが弾けるようになるのか見てもらおうと思って来ました。」

と聞かれてもいないのに捲し立てる私。

 店員さんは若干引き気味ながら、こんな怪しげな客に対し笑顔で応対してくださった。ありがたいことである。

 

 その後リペアマンのお兄さんが点検のため奥に引っ込み、その間出されたローズヒップティー(お洒落な店は飲み物もお洒落なのだ)を飲んでいたが、針の筵に座っている気分も味わう。


 暫くしてお兄さんが戻ってきて説明を開始した。

「まずは弦の交換ですね。」

はい。

「駒が無いので付けます。」

はい。

「魂柱も無いので付けます。」

はい。

「ペグも交換した方がいいと思います。」

なぬ!?それは想定外。

「あとはペグの位置があまり良くないので、一旦穴を塞いで開け直した方がいいとは思いますが、お金がかかるので買った方が……。」

ですよね……。

 念のためこのヴァイオリンは楽器としてどうなのか聞いてみたところ、やっぱりかなり安いもので雑な作りをしているらしい。特に指板やペグは本来黒檀でできているらしいのだが、これは白木に黒く塗装してあることからも分かるのだそうだ。弾けるようには直せるが後々不具合が生じるのではないかとのことだった。

 お兄さん曰く、

「修理にどこまでお金をかけるかですが、どれだけこの楽器に思い入れがあるか、ですね。」

ですよね……。

 


 結局、最低限弾けるようにしてもらうため弦を張ってもらうのと駒と魂柱の設置をお願いし、楽器を預けてきた。

 遺品だし、やはり直したいよね。

 

 ちなみに弓もやはり安物だった。しかも何故か横に反っているらしく直すとかえって高くつくため買った方が良いのではとのことだったので廃棄することにし、その代わりに1番安い弓を注文してきた。いいよね叔父さん。